料理初心者が一度は憧れる鉄のフライパン(以下鉄パン)。
美味しい料理が作れる反面、手入れや扱いが難しそうでなかなか手を出せない方も多いと思います。
そんな方にオススメなのが、"岩鉄鉄器/ダクタイルパン"です。
多くのブロガーや料理人の方もおすすめしている商品ですが、一方で実際どうなの?と疑問を持たれている方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、2年使用した感想をメリットとデメリットを交えてご紹介いたします。
鉄鋼メーカー勤務で鉄に詳しく、かつ他の鉄パンも使っているからこその感想ですので参考になると思います。
この記事を読めば、本商品の具体的なイメージが湧きますので、後悔しない判断ができるようになります。
是非最後までご覧ください
- ダクタイルパンシリーズの購入を検討中
- ダクタイルパンが自分に扱えるか不安
- 鉄パン選びに失敗したくない
ダクタイルパンは"買い"なのか?
初めに結論を申し上げておきます。
ダクタイルパンは圧倒的に”買い”です。
特に初心者の方には非常にオススメです。
これほど満足度の高い商品も珍しいと思います。
そう思う理由を以降説明していきます。
ダクタイルパンのサイズ展開
ダクタイルパンのサイズは4種類あります。
それぞれのサイズを表にまとめましたのでご参照ください。
名称をリンクとしていますので、詳細確認の際にご活用ください。
名称 | 上端 直径 | 底面 直径 | 深さ | 長さ (取手含) | 重さ | 容量 |
ダクタイルパン18 | 18cm | 14cm | 4cm | 32cm | 580g | 0.8L |
ダクタイルパン22 | 22cm | 16cm | 5cm | 39cm | 770g | 1.5L |
ダクタイルパン26 | 26cm | 20cm | 5cm | 46cm | 1,100g | 2.0L |
ダクタイルディープパン24 | 24cm | 18cm | 7cm | 44cm | 1,000g | 2.5L |
ゆるぱん使用品
ゆるパンが使っているのはダクタイルディープパン24です。
上述のサイズ表と重複する箇所も多いですが、簡単に商品の詳細を記載しておきます。


ダクタイルパンのデメリット

まずはデメリットをご紹介いたします。
なお、このデメリットは鉄パンにおける比較です。
アルミやホーローなどの別素材と比較したデメリットではないのでご注意願います。
価格が高い
24㎝サイズで比較したときに、3,000円のものもあるなかで、16,500円は高いですよね。
ダクタイルパンの購入を迷う大きな原因の一つだと思います。
ただ一生使える耐久性があるので、40年使うとすると年額410円、月額だと35円です。
これを高いとみるかは人それぞれと思います。
加えて、高いか安いかは価格だけでは決まらないと思いますので、後述するメリットと合わせて判断してみてください。
火加減が難しい(使い始め)
ダクタイルパンは鋳鉄製にも関わらず、厚みが1.6mmとありえないほど薄いです。
薄いことで熱伝導率の高さを獲得している一方で、慣れない人が使うと食材を焦がしてしまう恐れがあります。
私も最初の調理でしっかり肉を黒くしてしまいました…

写真はニトリのスキレットとの比較です。
同じ鋳鉄製ですが、ダクタイルパンの方が薄いことがわかります。
この違いが熱伝導率に影響しているわけです。
ただ使っているうちに慣れますので、そこまで心配しなくて大丈夫です。
というより、熱伝導の良さは料理の時短に繋がるので、慣れれば基本的にはメリットになります。
じっくり火を通す料理には不向き
上述の通り、ダクタイルパンは厚みが抑えられています。
これにより素早く加熱できるのですが、これは同時に冷えやすいことを意味します。
要は蓄熱性はどうしても劣ってしまうわけです。
なので煮込み料理やじっくり弱火で旨味を出す料理には向きません(温度が安定しないため)。
そのような料理をメインで作りたい方は、STAUBのような厚みのあるものを購入してください。
若干バランスが悪い
本当に若干、重心が持ち手側にあるように感じます。

写真は直径22㎝の五徳の中心から、持ち手側に何センチ動かすと逆サイドが浮くかを試したものです。
結果、ダクタイルディープパンは4.5cm動かすと浮きました(赤丸部)
対して底面サイズが同じのティファールのものは5.5cmまでは浮きませんでした。
22㎝レベルの大きな五徳でこの差は気になりません。
実際、1年使って危険や不便を感じたことはないです。
ただ、携帯バーナーなど小さい五徳で調理する際は注意した方がいいかもしれません。
ダクタイルパンのメリット

続いてメリットですが、以下の通りです。
デメリット同様、鉄パンの中での比較である点ご留意ください。
完全メンテナンスフリー
ダクタイルパンの最大にして最高のメリットです。
鉄パン最大のデメリットであるメンテナンスの煩わしさから解放されるわけですからね。
私もこれが決め手となり、購入に至っています。
鉄パン最大のデメリットはメンテナンスの煩わしさ。
テフロンパンに比べて段違いにメンテナンスの手間がかかるため、私の友人含めこれが原因で鉄パンの使用を止めてしまう方を見てきました。
なお、具体的にかかる手間は以下の通りです。
購入後の空焼き:さび止めを焼き切るため
シーズニング :さび防止
料理後の即洗い:さび防止
洗剤禁止 :さび防止
どうでしょう?結構めんどくさく感じませんか?
使用を止めるのも無理はないです。
一方でダクタイルパンは、これらの手間が一切かかりません。
空焼き・シーズニング不要、好きなタイミングで洗えるし、洗剤も使えるので衛生的。
私もテフロンパンと何一つ変わりない扱い方をしていますが、全く問題は出ていません。
料理した後は、汚れを浮かすためにお湯にしばらくつけておき、そのあと洗剤で洗うって感じです。
メンテナンスを簡素化した商品は他にもありますが、調べた限りでは、上記4点の手間を全て解消しているのはダクタイルパンだけでした。
ずぼらな方はダクタイルパン一択です。
手入れが不要なのはなんで?
なんでダクタイルパンは手入れ不要なの?と思った方に向けて説明します。
鉄に関する少し専門的な話になるので、興味ない方は読み飛ばしてもらって結構です。
結論から申し上げると、表面に施した窒素加工と酸化加工によって実現されています。
もう少し具体的に説明します。

図①表層の断面図イメージ(引用元:岩鉄鉄器HP)
窒素加工
窒素加工によって表面素地が強靭になっており、キズがつきにくくなっています。
キズがつくと、素地が剥がれて鉄そのものに水分が付着しサビが発生しやすくなります。
素地が強靭であることによってその心配が低減されているわけです。
酸化加工
少しややこしいのですが、鉄を予めサビさせておくことでサビを防止するのが酸化加工です。
「えっ?」てなりますよね(笑)

サビには黒さびと赤さびの2種類があり、世間一般のイメージは赤さびだと思います(左図)。
対して、黒さびは「良質なサビ」とされ、金属を腐食から守ってくれます。
鉄パンの多くが黒いのは、黒さびが表面を覆っているからです(右図)
ダクタイルパンは黒さびと上述の窒素加工を融合することでサビの発生を強力に抑えています。
ちなみに黒さびは酸度の強い洗剤で洗うと取れてしまいます。
黒さびが取れた状態で鉄が水分に触れると、言うまでもなく赤さびになってしまいます。
これが鉄パンに洗剤を使っちゃいけない*理由です。
*馴染んで強力な油膜ができればその限りではないです
軽い

購入の決め手の一つになったポイントです。
鉄パン購入の際、重さは非常に重要な観点です。
重すぎると日常遣いがしんどくなり、使わなくなってしまいますからね。
目安は完全に独断と偏見ですが1,300g。
それ以上はそれなりに体を鍛えていても厳しいと思います。
対してダクタイルパンはサイズによりますが、一番大きい26㎝のものでも1,120gと最軽量クラス。
重さが苦で「今日は使うのやめとこう…」と思ったことは一度もありません。
頑丈で熱くならない持ち手
鉄の持ち手は熱伝導がいいので熱くなりがち。
中華料理屋で布をフライパンに巻いて調理してる姿見たことないですか?
あれが普通です。素手では到底握れません。
私もニトリのスキレットを使うときには鍋掴みを使っています(図①)。
しかし、日常遣いでこれは超不便です。
鍋掴みは汚れがちなので、洗う手間も出てきます。
何よりうっかり素手で触ったらやけどしちゃうかもしれませんからね。
一方、ダクタイルパンは持ち手が熱くなりません。
持ち手の付け根に穴(下図赤丸部)を開けることで熱伝導を鈍化させているんです。
今のところ、どれだけ加熱してもほんのり温かくなるくらいで、持てなくなったことはありません。

また鋳鉄製で持ち手がシームレスなので、超頑丈です。
ほとんどの鉄パンは本体と持ち手を接合して作られています。
その場合、接合部が腐食や破損して使えなくなる可能性があります
ダクタイルパンはその心配がありません。
他の鉄パンと比べると、持ち手の強度は段違いです。
料理が時短できる
デメリットでは熱伝導が良すぎて火加減が最初の方は難しいと記載しました。
しかし慣れるとメリットに変わります。
熱が伝わりやすいことで料理が時短できるんです。
試しに、ベーコンを同じ時間焼いて、他の鉄パンと比較してみます。

左がダクタイルパン、右がニトリのスキレットを使って焼いたものです。
左は中心の方も焼き目がついていますが、右は端しか焼き目がついていません。
あと30秒ほどあれば、右も左のようになると思いますが、この30秒の差が毎日の料理には大きく響いてきますので、熱伝導は良いにこしたことはないわけです。
全熱源に対応
ダクタイルパンは熱源を選びません。
IHがダメな商品もある中で、これもうれしいところ。
我が家はガス火派なので、IH非対応でも問題はなかったのですが、将来子供ができて安全に気を遣うようになると、IHコンロにする可能性は十分にあります。
一生涯使うつもりで購入する鉄パンですから、生活環境の変化に対応してくれているのは嬉しい限りです。
まとめ
ダクタイルパンのメリット・デメリット感想も交えて説明してきました。
デメリットもありますが、「完全メンテナンスフリー」このメリット一つで、全てのデメリットを吹き飛ばせます。
「鉄パンを調べまくった結果、どれがいいかわからなくなった」
そんな方は、ダクタイルパンにしておけば間違いはありません。
ダクタイルパンはそれほどまでに、鉄パンのいいトコロを全て内包していますから。
また、もし鉄パンの選び方がわからない!という方がいらっしゃましたら、ポイントをまとめた以下記事も参考にしてみてください。
【鉄のプロが解説】鉄のフライパンの選び方。初心者向けおすすめ7選も紹介(40社から厳選)