【鉄のプロが解説】ダクタイルパンのダクタイルってなに?他の鉄フライパンとの違いを解説

写真はイメージです

当ブログで激押ししているダクタイルパンですが、今や2か月待ちの超人気商品になりました。

さて、こんなふうに思ったことないでしょうか?

ダクタイルパンの”ダクタイル”ってなに?

答えは「ダクタイル鋳鉄」です。

「は?」となりますよね。

そこで今回は鉄鋼メーカーに10年以上勤めている筆者が、以下についてわかりやすく解説します。

  • ダクタイル鋳鉄の特徴
  • ダクタイル鋳鉄をフライパンに使う意義

この記事を読めば、ダクタイルパンの魅力がより一層感じられるはずです。

ぜひ最後までご覧ください。

目次

鋳鉄の基礎知識

「ダクタイル」と頭につくくらいなので、ダクタイル鋳鉄が普通の鋳鉄とは違うことは想像できると思います。

では何が違うのか?

その違いを理解するためにまずは普通の鋳鉄の基礎知識を紹介します。

鋳鉄はスキレットなどの鋳物に使われる

"鋳鉄とは炭素含有量が2.1%以上の鉄です"

なんて教科書的に解説しても難しくて意味わかんないですよね。

イメージしやすいように答えると、鋳鉄は鋳物によく使われる鉄のことです。

写真出典:ヨシロ機工株式会社

鋳物とは、写真のように商品の形に合わせた型(鋳型)に鉄などの金属を流し込んで作った製品のこと。

キッチンツールでいえば、スキレットや南部鉄器をイメージしていただければわかりやすいかと思います。

鋳鉄の特徴

鋳鉄と普通の鉄(以下一般鋼)の特徴は大きく異なります。

違いは以下の通りで、これらが鋳鉄製フライパンのメリットやデメリットに大きくかかわってきます。

一般鋼との違い
  • さびに強い
  • もろい

さびに強い

理由は明らかになっていませんが、鋳鉄は一般鋼比べてさびに強いことが様々な実験で示されています。

鉄製フライパンの大敵であるさびに強いのは嬉しいポイントですよね。

さびに強い原理を詳しく知りたい方はこちらをご参照ください

もろい

鋳鉄は一般鋼に比べると硬いけどもろいという特徴があります。

硬いのにもろい?硬いなら強いんじゃないの…?

その感覚はおかしくないのですが、硬さともろさは両立します。

例えばガラスや陶器。

これらは硬くはありますが、落としたら簡単に割れますよね。

鋳鉄はそれほどではないものの、同じようにカッチカチである一方でもろいため、衝撃には弱い特性を持っています。

鋳鉄製フライパンのメリット・デメリット

鉄フライパンは下図のとおり鋼板製と鋳鉄製に大きく分けられます。

先ほどの特徴を踏まえ、他の鉄フライパンと比較したときの鋳鉄製フライパンのメリット・デメリットを解説します。

メリットデメリット
さびにくい
一般的に蓄熱性が高い
鉄分が多く摂れる
一般的に重い

【デメリット】一般的に重い

スキレットや南部鉄器は分厚くて重たいですよね。

あれは鋳鉄の弱点であるもろさを厚みでカバーしているから。

そのため、鋳鉄製フライパンが重くなるのは必然なんです。

【メリット】さびにくい

上述のとおり、鋳鉄は一般鋼に比べてさびにくいので、鋼板製の鉄フライパンよりもさびにくいです。

【メリット】一般的に蓄熱性が高い

デメリットに重さを挙げましたが、重いことで蓄熱性の高さを同時に獲得しています。

蓄熱性の高さで有名なSTAUBをイメージしてもらえればわかりやすいと思います。

【メリット】鉄分が多く摂れる

鋳鉄製フライパンは鋼板製のフライパンに比べて鉄分がより多く摂取できることがわかっています。

条件にもよりますが、最大で50%ほど多く摂取することが可能です。

情報元:鉄鍋から溶出する鉄分について

ダクタイル鋳鉄とは?

長くなった前置きを踏まえて、ここからダクタイル鋳鉄の説明に移ります。

ダクタイル鋳鉄の”ダクタイル”とは直訳すると「延性のある」という意味。

つまりダクタイル鋳鉄とは延びる性質が高い鋳鉄ということです。

普通の鋳鉄の弱点であるもろさを改善したものだとお考え下さい。

特徴などの詳細は後述します。

調味料(添加元素)を多く入れることでダクタイルに

どうやって弱点を改善しているの?

そんな知的好奇心旺盛な方向けの解説です。

ただし詳しく話すと長くなるので超簡単に。

ずばり、鉄を作る際に調味料のように添加する元素を多く入れることでダクタイル鋳鉄になります。

添加元素を多く入れることで、鉄の内部組織が変わり延びがよくなるのです。

ダクタイル鋳鉄の特徴

ダクタイル鋳鉄は延び性が良い以外にも特徴があります。

まとめると以下のとおり。

  • 延び性が良い(割れにくい)
  • 強度が高い(壊れにくい)
  • さびにさらに強い
  • 値段が高い

ざっくりまとめると、ダクタイル鋳鉄は鋳鉄の弱点であるもろさを改善したハイグレードな鋳鉄です。

延び性が良い(割れにくい)

上述のとおり、ダクタイル鋳鉄は延性があります。

延性があると衝撃を受けても鋳鉄自体が延びて粘ることができるので、割れにくくなります。

つまり、普通の鋳鉄よりも衝撃に強くて割れにくいわけです。

強度が高い(壊れにくい)

ものにもよるのですが、一般的には普通の鋳鉄よりも強度がざっくり15%以上高いです。

言わずもがな、強度が高いと壊れにくいです。

さびにさらに強い

一般鋼よりもさびに強い鋳鉄ですが、ダクタイル鋳鉄はさらにさびに強いことが様々な実験からわかっています。

参考資料:大気環境における球状黒鉛鋳鉄の腐食特性に関する研究

値段が高い

上述のとおりダクタイル鋳鉄は添加元素を多く入れますので、普通の鋳鉄より値段が高くなります

事実、24㎝で比較した場合、普通の鋳鉄製フライパンは5,000円ほどでも買えますが、ダクタイル鋳鉄製のフライパンは安くても10,000円ほどします。

高額である点はダクタイル鋳鉄のデメリットといえるでしょう。

ダクタイル鋳鉄をフライパンに使う意義

特徴はわかったけどダクタイル鋳鉄をフライパンに使うと何がいいの?

結論、以下の通りです。

  • 軽くできる
  • 長持ちさせられる
  • 防さび能力が高くなる

軽くできる

ダクタイル鋳鉄を使うことで得られる最大のメリットです。

上述のとおり鋳鉄製フライパンは弱点であるもろさを補うために、分厚く(=重く)設計されています。

その重さは日常使いするにはかなり厳しいもの。

多くの場合、普通の鉄フライパンよりも2倍以上の厚みがありますので、例えば26cm鉄フライパンの平均重量が1,300gほどとすると2,600g以上の重さがあることになります。

ダクタイルパンは厚みが薄いことがわかる

一方、ダクタイル鋳鉄は延性が高く粘り強いため、薄く軽く作ることが可能になります。

実際、写真のとおりニトリのスキレットと比較してみると、サイズはダクタイルパンの方が大きいにも関わらず、重さはなんと約20%も軽いんです。

からくりはいわずもがな、側厚も底厚も1.6mmという極薄を実現しているから。

このように鋳鉄製なのにダクタイルパンが驚異的な軽さを実現できているのは、ダクタイル鋳鉄を使っていることが主な要因です。

簡単に薄く、軽くできるわけではない

ただし、ダクタイル鋳鉄を使えば簡単に薄くできるわけではありません

絶妙な温度条件のもとで扱い、鉄の内部組織を薄くしても割れない強靭なものにする必要があります。

詳細は割愛しますが、これが非常に難しい。

ダクタイル鋳鉄を使った薄物フライパンがたった2種類しか販売されていないのはこの難しさが大きな理由です。

ゆるぱん

2種類のうち1つはダクタイルパン、もう1つは木屋印 軽量フライパンです

長持ちさせられる

これには2つ理由があります。

  • ダクタイル鋳鉄自体の強度が高い
  • ハンドルに溶接部がない

上述のとおり、ダクタイル鋳鉄は普通の鋳鉄よりも強度が高くて衝撃に強いので壊れにくいです。

また一般鋼の鉄フライパンはハンドル部に溶接があり、溶接部から腐食することで使えなくなることがあります

一方、鋳鉄製のフライパンはハンドルとの一体成型で溶接部がそもそもありません。

溶接部の腐食は割と起きる事象なので、安心して長持ちさせられるのは嬉しいポイントです。

防さび能力が高くなる

さびを防ぐために多くの手間がかかることが鉄フライパンのデメリット。

一方でダクタイル鋳鉄は鋳鉄よりさらに防さび性能が高いのが強み。

もちろん、ダクタイル鋳鉄でもお手入れは必要ですが、一般鋼の鉄フライパンほどさびに敏感にならずにすみます。

ゆるぱん

精神的な安心感は日常使いでは結構重要だと感じます

【まとめ】ダクタイル鋳鉄は最高の鉄フライパンを作れる素材

これまで長々と書いてきた内容をまとめると以下の通り。

  • 鋳鉄製フライパンは一般の鉄フライパンよりもさびにくくて鉄分が多く摂れる
  • しかし弱点であるもろさを補うために重いのが難点
  • 一方ダクタイル鋳鉄は強靭なので、薄く軽くできる
  • しかも防さび能力も強度も高いので、長持ちする

要するに、ダクタイル鋳鉄は鉄フライパンの強みを最大限に発揮できる素材ということです。

鉄分も多く摂れるし、さびにくいし、強度も高くて長持ち。

ダクタイルパンが2か月待ちの人気商品になるのも納得ですよね。

今回の記事でダクタイルパンの凄さが少しでも伝われば幸いです。

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