【鉄のプロが解説】シーズニングや油ならしにくず野菜炒めが必要か理屈でわかりやすく解説

ほとんどの鉄のフライパンの使い初めにはシーズニング(油ならし)が必要です。
そして多くの場合、シーズニングの仕上げにくず野菜炒めが指南されています。

しかし、くず野菜がないこともありますよね。
その時こんな考えが頭をよぎります。

くず野菜炒めは絶対しなきゃダメ?

今回はそんな疑問に理屈でお答えします

鉄鋼メーカーに10年以上勤め、鉄を熟知している筆者がわかりやすく解説するのでぜひ最後までご覧ください

  • シーズニング(油ならし)でくず野菜炒めをする理由
  • シーズニングにおけるくず野菜炒めの要否

なお、シーズニングや油ならしの理屈・やり方についてもっと詳しく知りたい方は以下の過去記事をご覧ください。

あわせて読みたい
鉄のプロが理論で教える鉄のフライパンのお手入れ方法(買ってから日常使いまで) 一生涯使える鉄のフライパンですが、お手入れに悩む方は多いです。実際、Googleで「鉄 フライパン」と打つと、検索候補の上位に「手入れ」が出てきます。ただ、実際に調...
目次

【結論】くず野菜炒めはしなくてもOK

先に結論をいうと、シーズニング(油ならし)の作業にくず野菜炒めはしなくても大丈夫です

"できればベター"
こんな温度感で考えていただければOKです。
理由を後述していきます

シーズニングは油ならしとも呼ばれますが、今回はシーズニングで統一します

シーズニングの目的と手順をおさらい

シーズニングにくず野菜炒めが必要か考えるにあたって、まずシーズニングの目的を再確認します。

シーズニングの目的
  • さびの防止
  • 食材のこびりつき防止

この目的を達成するために、鉄のフライパンの表面に油膜をコーティングします。
これがシーズニングの作業のゴールです。

コーティング&さび防止のイメージ(断面図)

さびの防止は図のように、鉄のフライパンの表面に油膜を張ることで、さびの原因となる酸素や水を遮断するイメージ。

食材のこびりつき防止は、肉などのたんぱく質と鉄は直接触れるとこびりついてしまいますが、間に油膜をかませることでこびりつきにくくするイメージです。

シーズニングの手順

ゆるぱん流のシーズニングの手順は以下の通りです(作業や手順の詳細は過去記事ご参照)

くず野菜炒めは手順に入っていませんが、もしするなら③と④の間でするとお考え下さい

くず野菜炒めをするなら③と④の間

①200℃程に加熱し水分を飛ばしたら火を切る

②乾性油を多めに入れ、キッチンペーパーを使いながら全体に塗布する(今回はぶどう種子油を使用)

③点火し、油の臨界温度以下で5分加熱する

④余分な油はオイルポットなどに移し、油を薄く均一に塗る。油が乾くまで12時間ほど放置

⑤ ②~④を3回繰り返す
(②の裏面への油の塗布は省略OK)

油を加熱した後に、仕上げにくず野菜炒めというイメージ!

本題は油膜のコーティングにくず野菜炒めは必要か否かということ

これまで確認した通り、シーズニングのゴールは油膜のコーティングを作ること
そしてくず野菜炒めはシーズニングの作業の一環とされています。

つまり本記事の趣旨は「油膜のコーティングにくず野菜炒めは必要か?」と言い換えることができます。

答えを出すには、油がコーティングされる原理を知る必要があります。
次項で詳しく解説します。

油がコーティングされる原理

前項で鉄のフライパンの表面に油膜をコーティングすることがゴールと説明しました。
ではどのように油は固化し、コーティングされるのでしょうか?

油は酸化することで固化する

結論から言うと、油は酸化することで固化します。
もう少し詳しくいうと、油の脂肪酸の酸化重合によって油が硬化することで固化します。

水分が蒸発して固まるのではなく、化学反応を通じて固化するわけなので、ドライヤーなどで乾かそうと思ってもあまり意味はありません。

<参考>乾性油とは?(コトバンク)

油は加熱することで酸化が促進される

ではどのように油を酸化させるのか。

もちろん、空気中の酸素によって「放置」でも酸化は進みます。
ただそれでは時間がかかりすぎます。

酸化を促進させる手段が油の加熱です。
油は加熱することで酸化が促進される、この特性を利用します。
上述したシーズニングの手順のにこの作業がありましたよね。

<参考>油の酸化ってなに?(さいたま市健康科学研究センター)

油の層が厚くなれば食材はひっつきにくくなる

"鉄のフライパンは使うほど油がなじむ"

これは、鉄のフライパンに油を引き加熱・調理を繰り返し行うことで、油が酸化→固化を繰り返し、何層もの油のコーティングが作られるからです。

くず野菜炒めの目的

前述のとおり、油は酸化させることで油膜としてコーティングされます。

シーズニングにおいてくず野菜炒めはまさに油を酸化させるために行います

野菜に含まれる水分が油を酸化させる

くず野菜炒めで油が酸化するのはなぜ?

野菜に含まれる水分が油を酸化させます

野菜は炒めると水分が流出します。
水はH2Oの化学式の通り酸素が含まれるので、油の酸化を促進させるわけです。

シーズニングでくず野菜炒めをするメリット

シーズニングでくず野菜炒めをするメリットは以下の通りです。

  • 油膜コーティングの時短
  • 鉄フライパンの鉄臭さ低減

上述の通りくず野菜炒めは油の酸化を促進させるので、油膜コーティングの時短になります。

また新品の鉄のフライパン独特の鉄臭さを野菜が吸収し、取り除いてくれるので、臭いの低減が期待できます。

くず野菜炒めのメリットは限定的

上述のとおりくず野菜炒めにメリットはあります。
ただそのメリットは限定的です。

まず油膜コーティングの時短について。
油の酸化は油を加熱だけでも十分促進されます
くず野菜炒めで、そこからどれほどの時短になるかは疑問が残ります。

次に鉄臭さの低減について。
そもそもシーズニングの前に鉄のフライパンを洗剤で洗うことが多いので、くず野菜炒めをせずとも鉄臭さはかなり低減されます。

くず野菜炒めはマストではない

以上のことから、くず野菜炒めは必要か?の問いに対しての答えは以下の通りとなります。

“できればベターだけどマストではない"

理由は以下の通り。

  • くず野菜炒めをせずとも油膜はコーティングされる
  • くず野菜炒めをせずとも鉄臭さは低減できる

【まとめ】くず野菜がなくてもシーズニングはできる

最後に今回の内容をまとめておきます。

  • シーズニングの目的は油膜のコーティングを作ること
    →油を酸化させてコーティングを作る
  • 油の酸化は加熱によって促進される
  • くず野菜炒めの目的は油の酸化の促進と鉄臭さの低減
    →油の酸化は加熱で十分、鉄臭さは洗えば取れる
  • 故にくず野菜炒めはマストではない

上記の通りくず野菜炒めはマストではないので、シーズニングのためにわざわざ野菜を買う必要はありません。
ご紹介したシーズニングのやり方で十分ですので、ぜひ一度やってみてください。

なお、シーズニングを含め手入れが一切不要な鉄のフライパンもあります。
筆者も愛用しており、本当に扱いが簡単鉄のフライパン初心者の方に最適
興味が出たなら、ぜひ過去記事をご参照ください。
きっとその魅力に引き込まれると思いますよ。

あわせて読みたい
【鉄のプロが解説】ダクタイルパンを4年使ってわかったメリット・デメリット 鉄フライパンのめんどうなお手入れに時間をかけるのはもうやめにしませんか? 美味しい料理が作れる鉄フライパンですが、お手入れのめんどうさに悩む方は本当に多い。こ...

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次