鉄のフライパンやスキレットを購入したら必ず行うのがシーズニング。
油膜を鉄の表面にコーティングすることで、サビの発生と食材のこびりつきを防止します。
そんな肝心なシーズニングをオリーブオイルでされている方をしばしばみかけます。
はっきり言って全く意味がありません。
どんなにがんばってもオリーブオイルでは油膜は形成されないからです。
え、そうなの!?なんで!?
そう思うのも無理はありません。
実はスキレットが人気のニトリですら筆者が指摘するまで取説や公式HPでオリーブオイルの使用を推奨していましたからね(後述)。
そこで、今回はシーズニングにオリーブオイルを使ってはいけない理由を解説します。
鉄鋼メーカーに10年以上勤務し、鉄を熟知している筆者がわかりやすく説明します。
この記事を読めば以下のことがわかります。
- オリーブオイルがシーズニングに適さない理由
- シーズニングに向いている油とその理由
- シーズニングにオリーブオイルを使う人が多い理由
- シーズニングの正しいやり方
読み終わった頃にはシーズニングの正しい知識が身についているはずですので、ぜひ最後までご覧ください。
【結論】不乾性油では油膜が定着しないから。使うべきは乾性油
オリーブオイルは不乾性油で乾きにくい性質のため油膜が定着しない
これがオリーブオイルが適さない理由です。
鉄の表面で固化して油膜として定着してもらわないといけないのに、ずっと液体のままじゃダメですよね。
となれば反対に乾きやすい油、乾性油を使えばいいわけです。
以降、それぞれの詳細を後述していきます。
シーズニングの目的を再確認
簡単にシーズニングの目的を再確認します。
目的を知らずして、シーズニングのゴールを見据えることはできませんから。
- さびの防止
- 食材のこびりつき防止
この目的を達成するために、鉄のフライパンの表面に油膜をコーティングします。
これが作業のゴールです。
シーズニングで使うべきは乾性油
"鉄のフライパンの表面に油膜をコーティングする"
これを作業のゴールとしたとき、コーティングしやすい油を選ぶべきですよね。
それが乾性油です。
ぶどう種子油や大豆油などがそれにあたります。
一方オリーブオイルは不乾性油に分類され、コーティングには適していません。
それぞれ詳細を後述していきます。
油は酸化することで固化する
"油は酸化することで固化する"
まず前提としてこの性質を抑えておきます。
ということは、酸化しやすい油をチョイスすればいいわけです。
<参考>油の酸化ってなに?(さいたま市健康科学研究センター)
油には3種類のタイプがある
油は乾性油、半乾性油、不乾性油の3種類に分類されます。
乾性油は乾きやすい性質、不乾性油はその逆、半乾性油は中間の性質となります。
ヨウ素価が高いほど酸化しやすい
これらの区分はヨウ素価によって決まります。
ヨウ素価とは油脂100gに付加できるヨウ素の量です。
ヨウ素価の説明はややこしいので割愛します。
(知りたい方は過去記事ご参照)
ヨウ素価が高いと酸化しやすいことだけ覚えてください。
【ヨウ素価の閾値】
乾性油 :130以上
半乾性油:129-101
不乾性油:100以下
上表の通り、乾性油はヨウ素価が高く酸化しやすいことを意味します。
上述の通り油は酸化することで固化しますので、乾性油がシーズニングに適しているということになります。
それぞれの油のタイプと一例
ヨウ素価を基にした各油の区分けの一例を載せておきます。
乾性油 | 半乾性油 | 不乾性油 |
---|---|---|
大豆油 | コメヌカ油 | オリーブオイル |
ヒマワリ油 | 菜種油 | ヤシ油 |
ぶどう種子油 | ゴマ油 | ツバキ油 |
あまに油 | コーン油 | ピーナッツ油 |
えごま油 | 米油 | ホオバオイル |
オリーブオイルは表の通り不乾性油に分類されます。
酸化しにくく固化しにくいからシーズニングに適していないわけです。
シーズニングにおすすめの乾性油
入手性の高さと値段でいえば、ぶどう種子油と大豆油です。
大概のスーパーで手に入ると思います。
参考までに商品リンクを貼っておきます。
ニトリの影響?オリーブオイルでシーズニングする人が続出する理由
上述の通り、オリーブオイルがシーズニングに適していないのには科学的な理由があります。
それなのに、なぜオリーブオイルでシーズニングをする人が後を絶たないのでしょうか?
知識がない、ネットの間違った情報を鵜呑みにしてしまったなど、ありがちなパターンも多いでしょう。
ただ個人的にはニトリの影響が大きいと考えています。
ニトリは鉄フライパン人気の火付け役
ニトリの鉄のフライパンといえばスキレットです。
キャンプブームも相まって"ニトスキ"の愛称で人気が爆発、全国的に品薄になりました。
安いのに質も高いのが人気の理由で、最初の鉄のフライパンがニトスキという方は多いと思います。
事実、私もそうでした。
ニトリの取説とHPにオリーブオイルの文字が
初めての鉄のフライパンであれば、取扱説明書を見る方が多いはず。
ニトリ スキレットの取説にはシーズニングのやり方が書かれています。
そこにはなんと書かれているでしょうか?
なんとニトリ スキレットの取説にはオリーブオイルの文字が。
これではシーズニングにオリーブオイルが適しているように見えちゃいます。
これがシーズニングにオリーブオイルを使う人が続出する理由の一つだとにらんでいます。
一流の大企業が書いていることに疑いを持つ人もいないでしょうからね。
ニトリに問い合わせ→訂正するってよ
わざわざオリーブオイルを明記している理由をニトリに問い合わせてみました。
もしかすると、ニトスキ個別の事情があるかもしれませんからね。
結論、「間違ってました。訂正します」とのこと。
実際、HPからはオリーブオイルの文字が消えていました。
(過去のお客様からのQ&Aは残ったまま)
これでシーズニングにオリーブオイルを使う人は減りそうです。
正しいシーズニングのやり方
最後に正しいシーズニングのやり方を載せておきます。
作業の詳細解説は過去記事を参照してください。
①200℃以上に加熱し水分を飛ばしたら火を切る
②乾性油を多めに入れ、キッチンペーパーを使いながら全体に塗布する(今回はぶどう種子油を使用)
③火をつけ、油の臨界温度以下で5分ほど加熱する
④余分な油はオイルポットなどに移し、油を薄く均一に塗る。油が乾くまで12時間ほど放置する
⑤ ②~④を3回繰り返す
(②の裏面への油の塗布は省略OK)
【まとめ】正しい知識で正しくシーズニングを!
シーズニングは鉄のフライパンを使いやすくするための肝となる作業です。
オリーブオイルを使って「うまくいかないなぁ」と悩んでいる方がいれば、油を変えてもう一度やってみてください。
またこの手の話は方法論だけではなく、理屈を考えることも重要です。
ネットには受け売りの情報が死ぬほどありますからね。
やっぱりシーズニングは面倒。鉄のフライパンはやめようかな…
この記事を読んでもしそう思った方も、諦めるのはまだ早いです。
シーズニング不要のフライパンもあるからです。
興味がある方は、シーズニングが不要な理屈も併せて解説させておりますので、是非こちらの記事もご覧ください。
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