ニトスキの愛称でお馴染みのニトリのスキレット。
手ごろな価格でキャンパーや鉄フライパン初心者などに人気の商品です。
一方でこう思う方もいるでしょう。
安いのはいいけどちゃんと使えるの…?
そこで今回は、5年間使用した感想を交えつつ、様々な実験を通してニトリ スキレットを徹底レビューします。
10年以上の鉄鋼メーカー勤務で得た鉄の知識と、所有している4本の鉄フライパンとの比較を交えながら記載しますので、きっと参考になると思います。
ぜひ最後までご覧ください。
- スキレットの特徴
- ニトリ スキレットの真の実力
- ニトリ スキレットと他社製品との違い
- ニトリ スキレットの蓋などのオプション品レビュー
- ニトリ スキレットの正しいお手入れ方法
【結論】ニトリ スキレットは十分使える高コスパ商品
ニトリ スキレットは超高性能ではないものの、料理の楽しさがしっかり味わえる高コスパ商品です。
強いこだわりがない限り、十分に満足できるはず。
鉄フライパン初心者やコスパ重視の方に特におすすめです。
そう思う理由を後述していきます。
スキレットの特徴
スキレットについてあまりよく知らない方に向けて簡単に説明します。
スキレットは鋳鉄製のフライパンのことで、以下特徴があります。
- 重いけど頑丈だから長く使える
- 蓄熱性が高く料理が美味しくなる
- 鉄分がより多く摂れる
- 幅広い調理に適している
重いけど頑丈だから長く使える
スキレットはもろい鋳鉄を使っている関係上、もろさの補強のためにどうしても分厚くなるのが特徴。
分厚い分重いですが、その分頑丈で長く使えます。
蓄熱性が高く料理が美味しくなる
蓄熱性とは字のごとく熱を蓄える性能。
蓄熱性が高いとムラなく均一に加熱でき、食材の旨味を閉じ込められるので料理が美味しく仕上がります。
ただその逆で加熱には時間がかかります。
鉄分がより多く摂れる
鉄フライパンを使うと鉄分が取れるのは有名な話。
鋳鉄はさらに普通の鉄より10~20%ほど多く鉄分が取れることがわかっています。
現代人に不足しがちな鉄分を無意識に多く摂れるのは嬉しい限り。
幅広い調理に適している
煮る、焼く、蒸す、燻すなど、蓄熱性が高いので幅広い調理に適しています。
強いていうなら底が浅いものがほとんどなので、スープなどの水分が多いものには向きません。
また、蒸し料理や燻製をする際には底上げ網が必要なので注意!
ニトリ スキレットのラインナップ
ニトリ スキレットは2サイズあります。
それぞれの基本情報をまとめておきます。
15cmは持ち運びやすいけど、1人分でも調理がちょっと窮屈。
使いやすさは圧倒的に19㎝です
他社製品との比較
ニトリ スキレットの購入を検討する際に目に入るであろう競合品を比較表にしてみました。
商品 | 目安価格 | サイズ | 重量 | 底厚 |
---|---|---|---|---|
ニトリ(19cm) | 799円 | 幅29.5×奥行19.7×高さ4.3cm | 1,330g | 4.0mm |
ダイソー(15cm) | 300円 | 幅25.5×奥行15.1×高さ3.0cm | 750g | 4.0mm |
キャプテンスタッグ(20cm) | 1,100円 | 幅31.5×奥行21.5×高さ5.0cm | 1,500g | 4.3mm |
ロッジ(8インチ≒20cm) | 2,700円 | 幅32.5×奥行20.2×高さ4.3cm | 1,490g | 5.0mm |
ダイソーは20cmもあるけどまさかの鋼板製…
スキレットじゃないと判断し、確実に鋳鉄製である15㎝を記載してます
ニトリ スキレットは、キャプテンスタッグ・ロッジより厚みがないので蓄熱性は劣ります。
ただ後述しますが、4.0mmあれば必要十分です。
スキレットはアウトドアでも使う、つまり持ち運びやすさも大事だと考えると、ニトリのスキレットはバランスの良さが光ります。
性能重視ならロッジ一択です。
キャプテンスタッグは底厚の割に重いし、正直中途半端だと感じます。
ニトリ スキレットのオプションアイテムレビュー
オプションアイテムは蓋とハンドルカバーの2種類。
両方とも持っているのでレビューしていきます。
上図のハンドルカバーは販売終了しましたので、後継品をチェックしてください
ニトリ スキレットの蓋は微妙。だけど…
蓋のラインナップは以下の通り。
価格 | サイズ | 重量 | 素材 | |
---|---|---|---|---|
16cmサイズ | 599円 | 幅24×奥行18×高さ2cm | 140g | 鉄 |
20cmサイズ | 699円 | 幅28×奥行22×高さ2cm | 220g | 鉄 |
専用品なだけあって、持ち手が本体ハンドルの角度に合わせて設計されてるので、密閉性はそれなりにあります。
問題は耐久性。
塗装がかなりしょぼく、傷が少しつくとぺりっと剥がれてしまう…
剥がれると鉄がむき出し、さびが発生します。
落とすなど傷がつくようなことをした記憶はないのに、気づいたら剥がれてさびてた感じです。
アウトドアで使うことも想定される中、この耐久性は心もとない。
とはいえ、密閉性を考えると代用品もないでしょうから、気を付けて使う以外に対策はなさそうです。
ニトリ スキレットのハンドルカバーは普通に使える
価格 | サイズ | 重量 | 素材 |
---|---|---|---|
499円 | 幅6×奥行14cm | 20g | コットン、ポリエステル、豚皮 |
調理中かなり熱くなるので、ハンドルカバーは必須。
さすが専用のハンドルカバーだけあって、装着性は高め。
抜き差しもスムーズ。
厚みもかなりあり、中に豚皮が使用されているので熱く感じることはないです。
弱点は豚皮使用もあって洗えないこと。
ちなみに筆者は関係なく何回も洗っていますが、今のところ問題は出ていません(笑)
※洗う場合は自己責任でお願いします
ニトリ スキレットの見た目(外観)
ニトリ スキレットの見た目はThe シンプル。
ロゴや模様もなくスッキリしているので、個人的にはかなり好み。
ハンドルの長さは9.5cm。
全長が28cmなので、本体との比率は2:1。
若干短い気もしますが、扱いにくいと感じたことはありません。
太さ1.0cmはかなり握りやすいし持ちやすいです。
これ以上太いと握りにくいし重くもなる。
逆に細いと軽くはなりますが持ち上げた時の重心が本体に寄るので安定性に欠ける。
よく考えられたバランスだなと感じます。
ニトリ スキレットのお手入れと保管方法
ネットに誤ったお手入れと保存方法が散見されるので注意が必要。
鉄の特性を熟知した鉄のプロである筆者が、バシッと正解をお教えします。
ニトリ スキレットの使用前に必要なお手入れ
ニトリ スキレットは買ってすぐには使えません。
以下のお手入れが必要です。
- さび止め用の油を洗い落とす
- シーズニング(油ならし)
さび止め用の油を洗い落とす
これは超簡単。
新品に塗られているさび止めを洗剤で洗い落とし、その後加熱して水分を飛ばすだけ。
シーズニング(油ならし)
さび止めを洗い流したらシーズニング(油ならし)を行います。
シーズニングの目的はさびと焦げ付きの防止。
ネット上に様々なやり方が紹介されていますが、大手サイトでも間違ったやり方を紹介している場合があるので注意
まずやり方を紹介し、そのあと解説に移ります。
ニトリ スキレットのシーズニングのやり方と手順
上記を2~3回繰返すとよりくっつかなくなります。
なお底面とハンドルへの油の塗布は防さびだけが目的なので、最初の1回だけでOKです。
やり方と手順の解説
正しいシーズニングに向けてまず目的を再確認。
- さびの防止
- 食材のこびりつき防止
目的を達成するために、スキレットの表面に油膜をコーティングする、これがシーズニングのゴール。
そして油膜をコーティングするためには以下が必須条件です。
- 油を酸化させる
- 油は乾性油を使う(オリーブオイルはNG)
油は酸化すると固まり、コーティングされます。
ただその際、油は以下表の乾性油に記載のものを使ってください。
乾性油 | 半乾性油 | 不乾性油 |
---|---|---|
大豆油 | コメヌカ油 | オリーブオイル |
ヒマワリ油 | 菜種油 | ヤシ油 |
ぶどう種子油 | ゴマ油 | ツバキ油 |
あまに油 | コーン油 | ピーナッツ油 |
えごま油 | 米油 | ホオバオイル |
コーティングするには乾いて固まってもらう必要がありますよね。
乾性油は字のごとく乾く性質の油で、反対に不乾性油は乾かない油。
どちらを使うべきかは一目瞭然、乾性油です。
よくオリーブオイルでシーズニングしてる人がいるけど、全く意味ないから注意!
また油は加熱すると酸化が促進されます(手順③)が、加熱し過ぎると有害物質が出るので、油の臨界温度以下で加熱する(手順④)よう注意してください。
(油ごとの臨界温度はこちらのサイトをご参照)
ニトリ スキレットの使用後の洗い方とお手入れ
さび防止のため料理後は速やかに洗うのがベター。
洗い方は簡単で、汚れをたわしなどでこすってお湯で洗い流すだけ。
その後、加熱して水分をしっかり飛ばしましょう。
なお、洗う際に洗剤の使用は基本NG
せっかくの油膜が取れる恐れがありますからね。
お湯でもしっかり油汚れは取れるよ!
水分を飛ばしたら、油を塗って冷えるまで放置。
この油の塗布は保管時のさび防止の意味合いが強いので、油の種類はなんでもOK。
ただできれば乾性油を使うことをおすすめします。
この時のスキレットは熱いので、乾性油を塗ればシーズニングしてるようなものですからね。
さび防止と焦げ付き防止が同時にできて一石二鳥!
ニトリ スキレットの保管方法
よく新聞に包んでの保管が推奨されていますが、シーズニングをちゃんとやればそこまでしなくてOK。
裸のままで大丈夫です。
油が水分を遮断し、さびから守ってくれます。
我が家は写真のとおり、シンプルな見た目を活かして出しっぱなし収納にしています(左下)。
【実験】ニトリ スキレットの蓄熱性
スキレットの強みである蓄熱性。
蓄熱性がしょぼければいくら安くてもスキレットを買う意味はありません。
価格の安いニトリ スキレットの実力は?果たして使えるレベルなのか?
実験で検証してみました。
実験の内容
〔実験の内容〕
200mlの沸騰湯が60℃を切るまでの時間を計測
▸タイプの異なる4種類で比較
▸計測はレーザー温度計を使用(室温23℃)
▸それぞれ5回トライし、平均を計測
素材 | 底厚 | 重量 | 口径 | |
---|---|---|---|---|
ニトリ スキレット | 鋳鉄 | 4.0mm | 1,330g | 19cm |
ダイヤモンドコートパン | アルミ | 3.0mm | 617g | 20cm |
STAUB | 鋳鉄 | 10.0mm | 3,900g | 22cm |
ビストロ蒸し鍋(土鍋) | 陶器 | 8.0mm | 2,000g | 23cm |
比較はイメージがつきやすいよう、普通のフライパン、蓄熱性の高さで有名なSTAUB、最も蓄熱性の高い素材である陶器製のビストロ蒸し鍋をチョイス。
普通のフライパンには勝つとして、不利な条件のSTAUB・ビストロ蒸し鍋に対し、どんな成績を残すのか!?
実験結果:ニトリ スキレットの蓄熱性はかなり優秀
結果は以下のようになりました。
単位:秒 | ニトリ スキレット | ダイヤモンド コートパン | STAUB | ビストロ 蒸し鍋 |
---|---|---|---|---|
90℃ | 13 | 10 | 19 | 25 |
80℃ | 86 | 70 | 96 | 99 |
70℃ | 200 | 160 | 216 | 220 |
60℃ | 335 | 276 | 355 | 360 |
普通のフライパンの1.2倍、不利であったSTAUBやビストロ蒸し鍋にも肉薄する大健闘!!
799円のスキレットがSTAUBや土鍋に匹敵する蓄熱性を持っているなんてすごすぎます。
ニトリ スキレットの蓄熱性はかなり優秀でお値段以上といえるでしょう。
【実験】ニトリ スキレットの加熱スピード(熱伝導率)
蓄熱性の高さの裏返しで、スキレットは熱伝導率が低いので加熱が遅いです。
では加熱にどの程度時間がかかるのか?
実験で確かめてみました。
実験の内容
〔実験の内容〕
中火で200℃となるまでの時間を計測
▸タイプの異なる4種類で比較
▸計測はレーザー温度計を使用
▸それぞれ5回トライし平均を計測
普段使っているフライパンとどれほど違うのか?
この点をイメージしてもらいやすいように、タイプ別に対戦相手を選びました。
実験結果:加熱は想像以上に時間がかかる
結果は以下のとおりです。
素材 | 底厚 | 重さ | 経過時間 | |
ニトリ/スキレット | 鋳鉄 | 2.0mm | 1,330g | 80秒 |
ダクタイルパン | 鋳鉄 | 1.6mm | 1,040g | 37秒 |
鉄職人 | 鉄 | 1.6mm | 950g | 50秒 |
ティファール | アルミ | 4.5mm | 810g | 50秒 |
最下位になるのはわかっていましたが、想像以上でした。
同じ鉄で底厚もそこまで変わらない鉄職人の1.6倍もかかるとは…
やはりさくっと炒め料理するのには向きませんね。
まぁその分蓄熱性があるわけなので仕方ないです。
ニトリ スキレットの焦げつき具合
ニトリのスキレットは焦げついて使いものにならない
こんなレビューをよく見かけるので、実際どうなのか目玉焼きを焼いて検証します。
油の量は小さじ1です。
結果、焦げ付きは全くなし。
問題なく使えますので、「使えない」というレビューは気にしなくてOK。
ニトリ スキレットの焦げつきを抑えるコツ
実験で焦げつかないとわかりましたが、それでも焦げつく方に向けて、焦げつきを抑えるコツを伝授します。
- シーズニングを何度もやる
- 調理前にしっかり加熱する
- 油を多めに使う or 油返しをする
- 中火以下で調理する
シーズニングを何度もやる
シーズニングを何度もやることで、油膜が何層も生成されて焦げつきにくくなります。
もしくは野菜炒めを意識的に作るのもありです。
野菜炒めなら焦げつかなくてストレスもないし、野菜の水分で油が酸化しやすく油膜も早くできます。
調理前にしっかり加熱する
目には見えなくとも、調理前のスキレットには必ず水分が付着してます。
この水分がタンパク質やデンプンとくっつくと、スキレットにこびりつき、ひいては焦げつきにつながります。
なので調理前は煙が出るくらいまでしっかり加熱し水分を飛ばしましょう。
油を多めに使う or 油返しをする
スキレットに限らず鉄フライパンは焦げ付き防止のコーティングがされていないので、テフロンパンを使う時より油を多めに入れるのが鉄則。
オイリーになるのが嫌な方は、以下の通り油返しをしてみてください。
きっと焦げつきは減りますよ。
①200℃以上に加熱し水分を飛ばす
②油を入れて全体に回す
③余分な油をオイルポットなどの別容器に移す
④普通に調理する
アウトドアの場合は③が難しいかも。
余分な油の処理に工夫が必要
中火以下で調理する
上述の3点をしっかりやっても、肉やお米を強火で加熱し続ければ必ず焦げ付きます。
(油を入れまくれば焦げ付きませんが…)
しっかり加熱したら、あとはスキレットの強みである蓄熱性を活かして中火以下で調理してください。
それでも素早くしっかり熱は通りますよ。
ニトリ スキレットのデメリット
以上を踏まえてニトリ スキレットのデメリットは以下の通り。
ただこれらはスキレット全般にいえる話だということを踏まえて以降ご覧ください。。
ニトリ スキレットに限ったデメリットは正直あまり見当たらないのが本音です。
重い
他素材のフライパンに比べてサイズの割に重いのが難点の1つ。
ただ重いからこそ蓄熱性の高さというメリットを獲得しているわけなので、これはやむなし。
加熱が遅い
他素材のフライパンに比べて加熱が遅いので、炒め料理など手早く料理するのには不向き。
ただこれも蓄熱性の高さとのトレードオフなのでやむなし。
お手入れが面倒
シーズニングして料理後すぐ洗って水分飛ばして…
ニトリ スキレットに限らず鉄フライパン全般にいえることですが、やはりお手入れは面倒。
個人的には鉄フライパンを育てるのは楽しいし、育ってくるとテフロンパンと同じような使い方ができるようになるので苦にはなりません。
ただめんどくさいのがとにかく嫌!という方には向かないでしょう。
ニトリ スキレットのメリット
次にメリットです。
圧倒的な高コスパ
上述してきたように、ニトリ スキレットはオシャレだし蓄熱性も高いしし焦げ付きにくさも十分だしで、とにかくパフォーマンスに優れています。
それでいて価格が799円ですからね。
コスパは最強クラスの素晴らしい商品です。
おしゃれで保温性のある器として使える
ニトリ スキレットはシンプルなデザインかつ食卓に出すのにちょうどよいサイズなので、保温性のある器として使えます。
黒が食卓の差し色になって映えるし、なによりずっと温かいご飯が食べられるのは嬉しい限りです。
【まとめ】こだわりがなければニトリ スキレットでOK
これまで様々な観点からニトリ スキレットをレビューしてきました。
ニトリ スキレットは低価格な割にしっかりした性能を備える銘品です。
正直これといった弱点は見当たりません。
スキレットは欲しいけどお財布事情が厳しい人やスキレット初心者は、ニトリ スキレットで十分満足できると思います。
キャンプシーズンになると品薄になってくるので、本記事を参考にして購入の検討をいただければ幸いです。
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